拓け!!ほうふ農みらい

先輩農家インタビュー

農家さん対談『農業の魅力』

今回は対談形式ということで、新田地区で露地ナスを生産している中山さんと、牟礼地区で施設トマトを生産している安村さんにお話しを伺いました!

 

『まずはお二人の自己紹介をお願いします。』

 

中山:じゃあ僕から。中山 博祐です。昭和53年生まれで今年42歳になります。家族構成は妻、1歳と3歳の子どもの4人家族です。僕が専業で、妻は看護師をしています。主に夏場に露地ナス20aを栽培しています。冬場は冬野菜を作っています。

 

『全て一人で?』

 

中山:夏場はアルバイトの方を雇ってやってます。

 

安村:それ以外はなしで?

 

中山:そうです。

 

安村:大変じゃないですか?それだけだと。

 

中山:夏場は大変です。その分冬はだいぶゆっくりです。ただ、今回の台風10号でナスが全部枯れてしまったので、だいぶ暇にはなりました。悲しいんですけど。

 

安村:取れ高がないですもんね。

 

中山:そうなんですよ。

 

安村:それで、お子さんもいて。

 

中山:今妻は育休中で、11月から復職するんですけど、11月から僕が農業やりつつ朝2人の子どもを幼稚園に預けるっていう生活になりますね。

 

安村:そうですよね。私も、子どもが保育園の時は、主に私が送り迎えしてましたね。

 

安村:私は、安村 真喜と言います。昭和50年の生まれの45歳です。家族構成は、妻と子どもが3人。今小2、小4、小6です。施設トマトを17aやっています。実家がすぐ近くなので両親も農業を手伝ってくれています。今実際農業やってるのは、私と両親2人と、あと姉もいて実際4人なんですけど、私は1日働き、他の人は大体半日で、なんとか回してます。妻は会社勤めをしているので、農業始めた頃は、保育園の送り迎えは私がやっていました。私も、元々サラリーマンだったんですけど、お互い仕事が深夜になることも多く、子育てのなかで恐らくどっちかが仕事を辞めざるを得ない状況になっていたかなと…。たまたま私が早期退職して農業を始めたので、なんとかやってこれました。退職してから、子どもと顔を合わす時間が増えたので、農業始めてよかったです!

 

中山:それは、いいですね!農業を始める時に、“2人でやろうよ”にはならなかったんですか?

 

安村:実際2人でやると、多分生活が苦しいと思います。やっぱり、妻が会社員で一定の収入があるのは助かりますね。

 

中山:うちと一緒ですね。

 

安村:そうなんですよ。結局一定の収入がないと…という面もあります。

 

中山:それを確保しつつ、私は農業を好きにやらしてもらっています。

 

安村:だからその分、協力し合わないといけないなって。農業だけで生活をしようと思ったら、多分このぐらいの面積(17a)だとちょっと難しいんですよね。何人か雇うぐらいの規模じゃないと、恐らく安定的な収入はないかなと。

 

中山:実際、夫婦2人で農業始めても、まず間違いなく思ったほどの数字は出ないですよね。自然相手なので計算通りにいかないですし。そうなった時に、やっぱり片方が働いてれば最低限の収入は確保できるわけで。それは新規で農業を始めるにあたって非常に大事なことだと思いますね。

 

『最初からそういう考えで?』

 

中山:そうですね。経営するにあたり、“僕は農業をして、妻は働いている人”って考えていましたね。

 

安村:ほんと大事ですよね。ある程度のお金があってはじめて、農業できるっていうことですね。

 

 

『農業の経営者として大切にしてることはありますか?』

 

中山:僕は、いかに利益を出すかということを常に考えています。本来は、経費の最小化と売上の最大化で利益を出していきますが、僕の場合は経費をいかに抑えるかということです。常に最悪のことを考えながらやってますね。ちょっと安村さんとは違うかもしれません。

 

安村:そうですね。大分真逆に近いかもしれないですね。私の場合は、経費はかかるもんだっていう前提で、そこを削って失敗するぐらいだったらかけようっていう考えなんで。それで赤字になっても、それをやらなかったらもっと赤字になるだろうっていうので、極力お金はかけています。なので、失敗がほぼ許されないんです。生活で妻に頼る部分はあるかもしれないけど、農業に関してお金を出してもらおうっていうのは一切ないので。

 

中山:僕はほんとすごく怖がりなので、お金突っ込んでどうこうするよりは、出来る範囲で売上を上げていくことですかね。自然災害が怖いので、その年に収穫ができなかったら、バイトでもしてなんとかします。

 

安村:露地野菜はリスクも大きいですよね。

 

中山:施設野菜は露地野菜に比べ、売上は上がっていくんですけど、施設って年中回していかないと結局元が取れないですよね。“どれだけ稼働させるか”、“どれだけこの施設に対してお金を生み出すか”というのが大事で、プレッシャーが大きいです。

 

安村:昨年、病気をして1ヶ月入院することになったんですけど、幸い回復が早かったので売り上げを出すことができましたが、売り上げがなかったら完全に資金ショートしてるんですよ。だから考えたらほんと怖いんですよね。1ヶ月で復帰できたから、なんとかぎりぎり回った感じです。だから“健康であること”は本当に重要です。

 

 

中山:一人農業であることの不安を和らげるために、規模拡大をして雇用を…となるんですけど、人を雇うと余計悩みが増えていくんですよね。だったら今の自分の広げた風呂敷の上で上手いことやっていった方がいいかなという思いがあります。何であれ、“心とお金のバランス”は重要ですね。

 

安村:その考えは似ていますよ。私は元々すぐに規模拡大して、人を雇ってすぐに売上を上げようっていう考えだったんですけど、規模拡大して人を雇っていくうちに、経営者である自分はどんどん農業しなくなってしまうと思うんです。管理者になってしまうと、現場で自分のやりたいことが出来なくなるので、今はこの規模で、親族だけに手伝ってもらって売上を確保することですね。このまま安定するまでは、今のままでやっていきます。

 

中山:一緒ですよね。

 

安村:就農前はすぐに規模拡大を考えてたんです。だけど実際やってみると難しいというか、多分自分の望んでいる農業にならないので。“自分が動かない農業って自分の中でありえないんです。”

 

中山:ですよね。僕は売るのは苦手ですけど、育てるのが好きなんです!

 

安村:そう!私も作るのが好きなんで。そこなんですよ。

 

中山:苗や葉が病気になったりもするけど、すくすく育つのを愛でるのが好きなんです。でも、育てるだけでなく、売っていかないといけない。

 

安村:そう、経営者としてね。

 

中山:人と話すのもすごく大事ですよね。農業も人と接するのが嫌だっていう人は厳しいですね。収穫したものはどうしても売らないといけないですし。また、栽培技術も、自分一人で参考書を見たり、インターネットで検索…だけでは全然追いつかない。やっぱりその土地土地の作り方や癖がありますからね。

 

安村:教科書がないんですよね、どこにも。

 

中山:だから色んな情報を得て、自分で理解して、この土地にはこれがいいっていうのを、何年かしてやっと分かるものです。

 

安村:今年4年目ですけど、未だに1回も納得できてないんです。多分、この先何年かかかるだろうなって。未だにやっぱり防府市内の農家さんには色々相談しますね。

 

中山:“横の繋がり”大事ですね。

 

安村:そうなんですよ。やっぱり相談しないと。この土地で農業する人と繋がらないと、適確なアドバイスって貰えないんです。部会に入るなど、どこかとの繋がりは非常に重要です。

 

 

『就農当時を振り返ってみてどうですか。』

 

中山:栽培技術については研修で言われた通りにやればそれなりに出来ると思います。就農後の問題は、どうやってそれをお金にするかですね。僕の場合は知り合いの伝手で市場を紹介していただきました。

 

安村:売り先に困ったんですね。

 

中山:みんな売り先は、考えると思います。

 

安村:私の場合、1年目は、作業が間に合わないっていうのが問題でした。

 

中山:僕も一緒です。毎日、日付が変わってましたね。

 

安村:実際やってみたら全然手が回らなくて。両親2人と私だけだと、収穫して出荷できる状態にするまでには日付が変わっていました。2年目からは、姉にも手伝ってもらってなんとか回り始めました。最初は、作業が思い通りの時間で終わらない。上手くやれてないっていうのもあるんだろうけど、想定している以上に上手くいかなかった。

 

『1日の作業量や作業内容はどのように決めていますか?』

 

中山:例えば収穫する前だったら、日が暮れるまでやろうとか、奥まで行ったらやめるとか。収穫が始まると、出荷したら終わりなんですけど、それが日付をまたぐんです。出荷するのが深夜1時とか2時とかになって、日の出とともにまた収穫というその繰り返しなんですね。

 

安村:そう。収穫した物は出荷しないといけないので。

 

中山:だから出荷作業が終わるまで終わらないんです。

 

安村:それがなかなか終わらない。

 

中山:終わらないですよね。1年目はそんな感じだったので、2年目から、全ての作業を前倒しにして、どんどん前もってやるようになりましたね。

 

安村:わかります!出来ることは先に先にという感じですよね。

 

中山:1ヶ月前であってもどんどん先に作業して、収穫が始まる前にある程度片を付けておこうという。

 

安村:あの終わらない作業を初年度に経験しないと、作業の前倒しなど分からないと思います。

 

中山:わからないですね。

 

 

『現地研修だけでは想定できないことも沢山あるということですね?』

 

安村:多分わからないですね。結局、現地研修してる時って、研修先のやり方があって、それに従っているだけなんで、あんまり難しくはないんですよ。

 

中山:そうですね。

 

安村:それがいざ自分でやろうとすると無理な部分が出てくる。

 

中山:全て自分で組み立てる必要があるから。それを1年経験して習得して、前倒しで出来るものはやる。

 

安村:うん。“前倒し”。

 

中山:そしたらだいぶ楽になる。

 

安村:回り始めます!ちゃんと。

 

中山:いきなりは無理ですよね。

 

安村:無理。多分1年目はどうしても。

 

 

 

『農家さんは書類関係が苦手と言われる方が多いのですが、お二人はどうですか?』

 

中山:僕も凄く苦手です。デスクワークより植物を眺めてたいんですけど…当然デスクワークもあります。経営者になると提出物もありますし、交付金をもらえばその関係書類もある。確定申告については税理士さんにお任せしてます。お任せとはいえ、入出金記録をパソコンでまとめて、その後の細かい事務作業や申告を税理士さんにお願いしています。僕は苦手なのでいろいろ悩むよりはちょっとお金払ってでも、プロの方にやっていただいて、僕は農業に専念した方が、トータルとしてスムーズにいくという考えです。

 

安村:私は自分で全てやります。その日のことはその日に。毎日。パソコン作業は帰って、20〜30分ぐらいのもんですかね。作業内容を書いて、あと収支、売上があったら売上を書いて、出てったものは経費を書いて。

 

中山:毎日はすごいですね。

 

安村:ちょっとのことですよ。

 

中山:いやー…わかりますけど、ちょっとなら、じゃあ2ヶ月ぐらいまとめてやっちゃえとか!

 

安村:いやー無理です。まとめてだったら多分やらないですね。1日1日やらないと多分嫌になります。1か月入院した時は、1ヶ月溜まってて、それをやるのに1か月以上かかりました。溜めると良くない。

 

中山:そのデータは何かに生かしていますか?

 

安村:収量も記録しているので、年ごとに把握できて、昨年の売上がめちゃめちゃ減ったとか、すぐわかります。

 

中山:じゃあ前年との比較とかできるわけですね。

 

安村:データを月ごとに見ていくと、経営計画と実際の売上はこれぐらいずれるんだなっていうような傾向についても、4年ぐらい経ってくると見えてきます。最初に出した計画通りには絶対いかないっていうのがつくづくわかりますね。だから上に振れる場合もあるし下に振れる場合もあるし。最初はなるべくデータ取ろうと思って、温度とかも全て記録していたんですけど、今は自動でクラウドに上がっています。

 

中山:それいいですね。それを基に分析するんですか?

 

安村:繋がりもあって、自分で分析するだけでなく、いろんなデータが欲しい機関などに無償で分析してもらうこともあります。他の産地の情報とかも参考にいただいたりして。他の農家さんとの比較によって、私の圃場の温度管理が良かったという結果も得られました。これも人との繋がりです。

 

中山:コツコツとデータの蓄積を積み重ねて、徐々に経営が安定していくっていう。そういうことですよね。

 

 

『農業をはじめるにあたって自己資金は必要ですか?』

 

中山:栽培する品目によりますね。安村さんのようなやり方だったら相当な額が必要ですよね?

 

安村:自己資金400万円ぐらいでした。だけどそれだけじゃ全然足りなかった。だからそれに加え、2,500万円くらい借りました。それだけあれば充分だろうと思ったけど、でも、1年目いざやり始めると、色んな問題が発生して、追加で100万円ぐらいかかりました。100万200万…と。そのお金をどう工面しようっていうのに苦労しました。就農後すぐは、売上が出てない状態で経費がかかるので。

 

中山:そうですよね。僕の栽培は、安村さんに比べると経費がかからない品目なので、200万円あれば始められますね。施設と露地の大きな違いですね。

 

『自己資金が全くないのは?』

 

中山:0円は無理じゃないですか。絶対、トラクターとかって必要ですよね。

 

安村:そもそもマイナスからのスタートなので、自己資金がないと、借り入れが余計に必要になります。

 

中山:生活も考えると500万円ぐらい欲しいですね。

 

安村:就農後、売上がでるまでは一切収入はないですからね。なので、農業次世代人材投資資金はすごく助かりました。

 

中山:僕も助かったというか、それがあったからやっぱり生活自体が安定します。どうしても、誰がやっても1年目2年目とかは本当に苦労するので、それがなかったら農業を続けていけていたか。そういった新規就農支援制度のおかげで、いろんな農業や、新規で就農したいという人が増えてきたんだと思いますね。

 

 

『農業にオアシス的なイメージをもって就農を希望されたり、コロナ禍や不景気になると農業に目が向けられたりしますが、お二人からメッセージとか、アドバイスとかもあればお聞かせください。』

 

中山:オアシス…それはリタイア後にやる農業じゃないですかね。生活していく、家族を養うにはそれなりの収入が必要ですし、農業も最低限のお金儲けが必要ですから。

 

安村:そうですね。恐らく、中山さんと私は考えが一緒なんですけど、“作るのが好き”であって、恐らく、その気持ちが無かったら結局続かないと思います。

 

中山:そうですね。金持ちになってやろうなんて大間違いです。お金持ちにはなれないけど、植物好きな私は幸せな気持ちになれます。

 

安村:休みも無いですしね。サラリーマンのように、土日休みなんてほぼ無い。

 

中山:ないですね。収穫が始まったら尚更休めない。

 

安村:そうですね。基本的に休みは1日も無いと思います。

 

中山:何かしらの作業がありますよね。言えることとしては、“好きな人にはいいかもしれないよ”くらいですね。

 

 

『今後の農業経営について展望を聞かせてください。』

 

中山:僕は今後もナスを作り続けます。理想は、春夏秋に注力して、冬は遊ぶこと。冬に野菜も作りますけど、生活に余裕が出ればそういう生活もできるということです。目標はアルゼンチンで1ヶ月くらいかけて登山をしたいんです。日本が冬の時に、ちょうどあっちが夏なので。やっぱりどっかで自分が楽しい思いをしたいですし、何か変わったことをするとモチベーションアップにもなりますしね。それを目指して僕は、今年はもう台風で終わっちゃいましたけど、来年以降もやっていきたいなと思ってます。

 

安村:実は今、夏は結構余裕があって。子どもの夏休みの時期と合うので大切な時間です。経営の方は、今はまず現状を維持すること。今は私分の給料が無い状態なので、私自身の給料が稼げるぐらいまでは持っていきたいなと思っています。私が稼げるようになったら、恐らく両親がリタイアの時期になるので、今度は雇用する形になって、規模拡大か何か他のことをやらないといけなくなると思います。

 

中山:ほんとに、うまくやれば季節労働にもなる。農業の魅力ですよね。

 

安村:うん。他で利益をしっかり上げられればワンシーズンまるまる休めるたりするので。

 

中山:そういう極端さが魅力ではありますね。ずーっと年間とおして月~金できっちり働かないといけない、なんてことはないから。ほんとに自分次第なんですよね。

 

安村:そういった点は、サラリーマンにはない魅力です。

 

中山:そうですね。大変でもやっていける、農業の魅力はそこにありますね!

 

 

お二人の以前のメッセージについてはこちら(リンクページへ移動)

中山博祐さんhttps://hofumirai.com/interview/vol-01/

安村真喜さんhttps://hofumirai.com/interview/vol-03/

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