拓け!!ほうふ農みらい

先輩農家インタビュー

悩んだらまずは農業を体験して欲しい

栽培品目/いちご 約25a(防府市台道)

重清信夫[重清農園] さん

就農に至った経緯を教えてください。

前職は大阪で会社員をしていました。仕事柄、地方への転勤や長期出張も多かったので、地方での暮らしに興味を持っていました。とはいえ、当時は農業の知識は全くなく、農業は定年後の職業というイメージがあったので、地方への移住=農業ではありませんでした。当時私は30代半ばでしたが、ちょうどその頃大阪で開催された就農ガイダンスに参加したところ、同世代の若い人たちも農業に携わっているのを初めて知り、やってみたいという思いが強くなりました。妻が防府市出身ということもあり、山口県の就農ツアーなどに積極的に参加し、就農を決意しました。

 

いちご栽培を決めた理由について

色々な作物を見学しましたが、いちごは露地野菜などに比べ軽量野菜であること、施設での栽培なので天候や気温に左右されにくく、高設栽培にすれば作業性が高まること等から、自分でも栽培できるのではないかと思いました。

 

いちごを育てる魅力

いちごは、消費者に合わせた栽培方法や販売方法の調整がしやすい作物だと思います。毎日食べる野菜などに比べ、消費者は価格や外見をよく見ており、価格設定によっては購買意欲も大きく左右されます。私の場合は、独自の販路を持っているので、ある一定の消費者層をターゲットにし、その消費者層が購入しやすい見た目や味、価格等を設定したブランディングを行っています。
また、いちごは苗の管理から収穫まで約1年半もかかるので、病害虫被害などを考えると取り返しがつかないのでリスクは大きいものの、比較的利益還元が大きい作物だと思います。

 

就農当初を振り返って

当初は、病害虫や台風の被害に遭いました。先にも述べたとおり、苗の管理から収穫まで長い期間を要するので、その間の病害虫被害は経営に大きなダメージを与えます。病害虫被害は避けられないので、適剤を適時実施し拡大を抑えることが重要です。また、施設についても、自然災害の被害に遭いにくい管理方法を身に付けるきっかけになりました。
ふり返ると大変な事ばかりですが、良かったことも沢山あります。大阪からの移住ということもあり、自然に恵まれた良い環境で子育てができたことです。また、独自の販路をもったことで、試行錯誤しながらも生産から販売までの全てに携わることができ、大きな達成感を得られています。そのなかで出来た繋がりも貴重であり、またその繋がりが自分自身を成長させてくれました。
今ふり返ると、何ごとにもポジティブに取り組めたのが良かったのだと思います。

 

農業だけでなく地域との関わりや組織での役割について

研修生受け入れや相談会への参加などの新規就農者との関わりのほか、個人事業主としての役割、地域での役割も多く務めさせていただきました。
先にも述べましたが、これも、これまで築いてきた繋がりの産物だと思っており、必要とされるうちは、そういった依頼に対してなるべく応えられるよう心がけています。

 

就農相談を受けたり指導育成する立場になって思うこと

まず就農相談を受けた際には、全ての方に現地視察や体験をお勧めしています。相談者の多くはテレビやインターネットなどを活用して情報収集する際に、自分の欲しい情報だけを抜き取っています。その情報だけで農業に良いイメージだけを持っていたり、ネット販売や6次化をしないと儲からないなど固定概念を持ってしまっている場合があります。不景気やコロナ禍によってそうした方がどんどん増えてきたように感じています。相談者の気持ちを大切にしながらも、現実について理解してもらえるよう心掛けています。
また、研修内容の整理や、経営の早期円滑化を図るため、スキルチェックリストを作成して研修を受け入れています。栽培等の習得すべき技術項目(約260項目)を見える化することで研修中の作業がどのスキル取得に繋がるのか、またどこを重点的に指導すべきかなどお互いに理解するためです。私の場合企業秘密が無いので、良い情報は共有したいと思っています。

 

次世代の担い手に伝えたいことなど

効率化を最優先することです。よく耳にする付加価値というのは、自分自身の時間や手間また経費をかけて人を雇うなど、ほぼコストで出来ているという側面に注意して欲しいです。目先の利益にとらわれるとコスト部分を見落としがちなのでしっかり見極めることが必要です。
また、経費や借入をしたくないという相談者がいらっしゃいますが、私は経営において設備投資は必要だと思います。設備投資は設備の充実や改良など経営を助けるものとなるのです。稀に上手くいく方もいらっしゃいますが、お金をかけずに経営が安定しているという方はとても少ないです。

 

今後の展望や目標について聞かせてください。

経営に関しては、品質、生産量及び売上高の向上、更なる効率化を目指し、そのうえで法人化についても検討したいと思っています。
活動面においては、現在行っている研修受入や就農相談などの後継者育成活動を次世代へ引き継いでいくことです。

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