拓け!!ほうふ農みらい

先輩農家インタビュー

対談~露地野菜について話を伺いました!~

近年就農相談が多い『露地野菜』をテーマに、担い手として県内で活躍されているお三方に対談をお願いしました。


原田さん(防府市大崎)/久芳さん(山陽小野田市)/中戸さん(山口市阿知須)
(以下敬称略)

 

お三方の自己紹介をお願いします。また、現在の栽培品目の決め手を教えてください!

【原田】
防府市の原田慎司です。経営面積は約7haで、就農して8年目を迎えました。20代前半に会社員として働きながら家庭菜園を始めて、結婚を機に退職し、林業と農業を兼業していましたが、徐々に農業にシフトしていき今に至ります。栽培主品目は、玉ねぎ、人参、里芋、さつま芋、野菜苗です。副として、にんにく、かぼちゃ、じゃがいも、大根、ブロッコリーなどを作っています。

僕の場合は、家庭菜園をしていた時に、ほとんどの野菜を栽培してみて、消去法で、作りやすさや売りやすさ、自分自身に向いている作物は何か…で露地野菜を主として栽培しています。

 

【久芳】
山陽小野田市の久芳勝彦です。35歳まで会社員をしていましたが、両親が水稲農家で集積により栽培面積が増えたので、退職し手伝うことを決めました。その後も集積が進み、平成29年に集落営農法人を立ち上げ、現在代表を務めています。法人で水稲と麦を栽培しているので、水稲農閑期に個人でキャベツ、ブロッコリー、白ねぎを約2ha栽培しています。また、夏はオクラ、なすなどの夏野菜を栽培しています。私の場合は、あくまでも法人がメインなので、農閑期に栽培できる野菜を選定しました。

 

【中戸】
山口市阿知須の中戸慎作です。キャベツ、ブロッコリー、さつま芋、玉ねぎのほか、野菜苗を作っています。また、休作のため麦を約3haやっています。父親が元JA職員で兼業農家だったということもあり、知識があるなか、また、最低限の設備が整った状態で就農しています。就農の際は、借入を最小限にしたかったので露地野菜をメインにしました。

 

露地野菜の特徴は?

【中戸】
施設とは異なり、天候に左右されるところですね。

【原田】
そうですね。播種や定植時期に合わせて準備を進めるんですけど、天候で思うようにいかなかったりで。大事なのは、作業に遅れが出ないように前倒しで作業することですね。

【中戸】
あと、年中草との戦いです(笑)。除草のタイミングも結構重要で、雨が降ると薬剤を散布できなかったり、タイミングを逃すと効きが悪かったりで、先を見越した作業や効率性が重要です。

【久芳】
大規模化するほどそこを補うために機械導入も考えなければいけないですしね。

【中戸】
そうですね。露地栽培は他に比べて走り出しの設備投資が少なくてもいいけど、作物専用機械や大型機械を導入すればもっと効率が上がる。露地野菜は例年価格変動が大きいので、導入のタイミングも色々考えますね。

【原田】
機械の他にも、機械を格納する倉庫や、貯蔵庫も。施設野菜などに比べて収穫量が多いので、調製場や貯蔵庫の規模は大きくないといけないんです。
でも、露地野菜は比較的日持ちするものが多いので、収穫してから出荷までの期間を調整できるのが良いところですね。

【中戸】
そうそう、特に根菜類は貯蔵ができる。もちろん貯蔵庫が必要ですけどね。前年の秋に収穫したものを半年や1年近く後に出荷することができます。市場価格を見ながら出荷時期を調整できる。面白くもあり、大きな強みですよね。

【原田】
あと、労働力は必要ですね。ここの三人は皆、家族の他に手伝ってくれる方がいらっしゃいます。市内や近所の方を農繁期や年間を通して雇用しています。

 

販売先や販路確保について教えてください!

【中戸】
JAを介して市場に出荷したり、基本的には直売出荷が多いです。野菜苗は独自の販路を持っています。直売所は袋詰めなど手間はかかりますが、市場に比べ高単価なので販路確保や維持のため日々走り回っています。人件費や単価など考慮して販売先を検討していけるといいと思います。

【久芳】
独自の販路をもっています。野菜苗購入先の業者と提携して、その業者に出荷しています。

【原田】
私は就農前からの繋がりもあって、卸業者や小売業者に販売しています。単価は低めになりますがとにかく量を出荷できる販路を確保しています。

 

インターネット販売や口コミ販売はどうでしょうか?

【中戸】
ネット販売していますよ。送料がプラスされて高価格になっても思ったより売れるので面白いですよね。ただ、数ある販路の一つとして確保するのはいいけど、それだけっていうのは難しいと思います。

【原田】
私も最近委託でネット販売しています。中戸さんの仰るとおりで、就農前や就農当初はネット販売をメインにしない方がいいですね。ネットや口コミは販売数量が約束されていないから売れるかどうかの確証がなかなか得られない。
就農して5年目くらいまでは栽培技術の安定、経営安定を目指してとにかく生産することに注力した方がいいですね。

【久芳】
そもそも露地野菜は一定規模の圃場を確保しなければならないので、地域の人との交流がとても大事になる。生産だけじゃなくて、水路清掃や周辺の草刈り、会合など地域密着ですしね。繋がりを持ちながら得られた販路や既存ルートを生かした販売も重要ですね。

 

農地の確保について

【原田】
私の地域(防府市大崎)では担い手が不足しているので、農地は確保しやすい状況です。ただ、全般的に言えるのは、農地を借りようと思うと地域の方との繋がりやコミュニケーションが大事です。農地を貸してもらえるような関係を築かないと。

【久芳】
あと、圃場周辺で何が作付けされているのかが重要です。野菜をつくる圃場の隣が水田だと圃場の水はけが悪くなり、野菜を作るには不向きな圃場になってしまうんです。阿知須は水田地帯なのと圃場整備を終えている圃場は当然水稲が作られているのでその周辺で野菜を作るのは難しいです。

【中戸】
野菜を育てる畑として活用する場合、ある程度団地化しているか、周辺圃場の作付け状況によって、生産圃場や作付けるものを調整する必要がありますね。僕の周辺も条件の良い圃場はないですね。ある程度まとまって畑地化できればいいですけどね。

 

珍しい野菜を栽培したいという声も多いです!

【久芳】
一時期ロマネスコ作りました。全量(大量に)ネット販売や飲食店で捌ければいいですけど、そういう珍しい野菜って流行みたいなものなので、“食べ方がわからない”“毎日たべたいかといわれたら…”というように、長く愛されるものではないんですよね。それだけでっていうのは難しいですよね。

【中戸】
“なんでそれを作りたいのか”が重要だと思いますね。例えば、“単価が高いから”、“契約販売ができる”とか、特別な理由があるならだけど、ネット販売とかと一緒で物珍しいとか流行だけでは、消費者を捕まえておくことはできないんですよね。僕は、地域の中で作られているものがその地域での1番だと思っています。季節性とかね。“夏になったら~が美味しい”とか、“冬になったから~が食べられるね”って。そういうものかどうかが大事ですよね。

【原田】
私のアドバイスとしては、本当に作りたいものがあるのであれば、実際にその作物で生計を成り立たせている人のところに見に行って話を聞くっていうのが1番いいと思います。何品目か作りたいのであれば、一人の農家じゃなくても、作物別に農家の所へ行って話を聞いたり、実際に体験させてもらったりとかが大事だと思います。県内・全国、色々な野菜があるから。オンラインを使って色々な人の話を聞くみたいなのをやってもいいですよね。

【中戸】
露地野菜をやってると、珍しい野菜じゃなくても、色々作ってみたい気持ちにはなりますよね。圃場もあるし、僕の場合は育苗用のハウスを建てたので、育苗が落ち着いたら何かやりたい!みたいにね。

【久芳】
それすごくわかります。私も、農閑期にハウスで葉物の水耕栽培をしています。自家用ですけどね。ハウスでも露地でも、ちょっと空くと何か作りたいなって気持ちになりますよね。

【原田】
でもこれって、露地野菜農家だからできるんだと思うんですよね。例えばハウスを建ててハウス面積をフルに活用して利益を得なければならない作物だとしたら、作付けスケジュールや栽培管理が細かいので多分そんな余裕は無いと思うんです。

【中戸】
ドカッとつくってドカッと収穫して、よし次!みたいなね(笑)自分がどれに向いてるかだよね。露地野菜は、圃場や作物の向き不向きで作物を変更することもできるし、万が一何かが起こっても残るのは圃場だけだから。とはいえ軸は大事ですよ。

 

就農希望者、農業に興味のある方へメッセージをください!

【原田】
まず情報収集をしっかりした方がいいですね。今はマイナビ農業や農業新聞など参考になる記事がインターネットにも多く掲載されていたり、相談会も頻繁に開催されています。ただ、その情報を頭の中だけで完結させないことが大切です。その次のステップとして、実際に農家から話を聞いたり体験したり、いつまでに就農したいという明確な時期があるんであれば、それまでにしっかり勉強して、身をもって体験して、それからどうするか決断することですね。
とりあえず農業大学校で学びたい…という方もいますけど、それはもう始めてしまっているのも同然です。その前にやらなければいけないことや、考えなければいけないことは沢山あります。

【中戸】
そうですね。また、就農を決断するまでの間も、就農してからも、人との繋がりは絶対に必要です。一人では決断できないし、就農してからも自らの経営を成り立たせるために多くの人に協力してもらったり、自分を高めてくれる人たちにも沢山出会うことができます。
また、認定新規就農者も認定農業者も経営計画を立てますけど、定めた所得目標を達成するために、その計画に沿った経営をしなければなりません。自営業なので、やるもやらないも自分次第。しっかり自分をコントロールできる人かどうかがとても重要です。

【久芳】
あとは、農業は自然相手の仕事です。就農当初は栽培技術が安定していないことに加えて、露地野菜は特に天候に左右されるので、うまくいかないことも沢山あると思います。
就農してから3年から5年は結果がでないことを覚悟して、そこが本当に踏ん張りどころ。ここを越えることができると、これだっていうものが見えてくると思います。

 

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